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「…っん」
 気がつくと、住宅街の只中に居た。
「……」
 きょろきょろ辺りを見回す。リアルで見る風景とは似て非なるそれに、異世界であるという認識を、否応無しに感じる。

「…そうか、着いたんだ」
 天津ワールドに。

 確証は無いが、俺…【炎部紅蓮】…は、そう思った。



 ―――突如発生した、天津ワールドの崩壊。
 それを食い止める為に、天津ワールドの住人から呼ばれた俺たち5人は、パソコンの画面に現れた扉を開けて…こ
こにたどり着いたんだ。


「…って、そのみんなはどこに居るんだ?」
 この場…少なくとも、見渡せる範囲に、仲間らしき人影は見当たらない。

「まいったなぁ…いきなりバラバラなのかよ…」

 呟きながら頭をかく。



  ドォォォォォンンンン!!!



「!!?」

 爆発音!?

 衝撃と音が響く。…割と近い。
 発生元と思われる方角へ視線を向ける。爆風がのろしのように立ち昇っているのが見えた。
「何があったってんだ…? …なんかヤな予感がするぜ……」
 胸に燻る恐怖心を気合で打ち消し、俺は駆け出す。
 もしかしたら、異変を察してどこかにいる仲間達もあそこへ集まるかもしれない。

「さぁて…鬼が出るか、蛇が出るか…!」
 憧れの天津ワールドの大地を一歩一歩踏みしめつつ、俺は現場へと急いだ……


  * * *





   キミのハートは燃えているか
   キミのハートに萌えはあるか
   強い心を持つヤツが
   誰より強い ヒーローになる

   熱い魂この胸に
   元気・勇気・本気・正義・抱きしめて!

   Oh Yes! ウィーアー・アマツレンジャー!!
   命の限り戦う キラリ瞳に☆(ほし)宿して
   O.K! ウィーアー・アマツレンジャー!!
   「絶対、負けない!」と 強く拳握り締めて叫べ

   P_A戦隊 アマツレンジャー!







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        P_A戦隊アマツレンジャー −P_A HEROES AMATSU RANGERS−
        Act:01/HEROES!〜キミのハートは燃えているか〜














 ―――人通りの少ない住宅街の道路に、駆け抜けるGRENの足音だけが響く。

 …と、不意に足音が増えた。
 GRENの足音が建物に反響して聞えるのではない。彼の歩調とは異なるものだからだ。
 やがて、足音が近づき、それは路地から飛び出し、GRENと並んだ。

「…!」
 瞬間、GRENの眼前に冷たい光が走る。
「うわっと!?」
 慌てて足を止めるGREN。彼の鼻先に刀の切先が紙一重といったところで突きつけられていた。
「キサマ、何者だ?“こちらの世界”の人間じゃあなさそうだが…?」
 刀の持ち主がドスを聞かせた低い声で問いかける。鋭い眼光がGRENの瞳を捉えて離さない。
 と、GRENがそんな彼に、不思議な既視感をおぼえた。
 会った憶えは無い。しかし、常に行動をともにしていたような、そんな雰囲気を。

【天下】…くん?」
「…!」
 口を突いて出た名前に反応した。
「やっぱりか? 俺だよ、【GREN】、炎部紅蓮!」
 突きつけられた刀を退けつつ迫る。天下と呼ばれた青年はきょとんとした顔になったが、すぐに破顔一笑する。

「ぐれさん!? 良かった…ずっと見つからなかったからどうにか成ったのかと思ってたんだぜ?」
 刀を納めながら天下がGRENにそう言った。
「“ずっと見つからなかった?” どういうことよ?俺たちはみんな一緒にこっちにきたハズじゃ…?」


  ドォン! ドォン! ドォォォン!!!


「「!!!」」
 GRENの呟きをかき消すように、爆音が連続して弾けた。

「ぐれさん!」
「あぁ、判ってる…ッ!」
 爆音と同時に立ち上る粉塵の流れが、現場が移動しつつあることを如実に示していた。
「追いかけるよ、天下くんッ」
「了解ッ!」
 自己ベスト更新クラスのスピードをたたき出しつつ、GRENと天下は動く爆風を追いかけた。

  * * *

「…やっ…と」
「追い…ついた…」
 十数分後、ようやく動きを止めた濃密な戦いの気配にたどり着く。
「…気付いてる?天下くん」
「ん…誰か…居る」
 二人は肩でしていた息を整えながら、爆風の向こうにいる『誰か』の気配を追う。


 ―――と、風が吹いた。

 一陣の突風が漂う粉塵を巻き上げ、さえぎられていた視界をクリアにする。
 GRENと天下の眼に、戦いの場に立つ人影が映った。

 あれは………


「「ガーディアンハーツ!!!」」

 二人が良く知る、正義の味方の姿だった。





   * * *





 天津ワールドを代表する正義の味方。魂を守護する者たち―――ガァーディアンハーツ
 GRENたちにとって、憧れとも言うべき彼女らが…目の前にいた。

「…始まってるみたいだな」
 と、背後から声がした。GRENが振り返ると、レスラー然とした大柄な青年がそこにいた。
「やぁ、【P.B】さん」
 天下が言った聞き覚えのある名に、大男は頷いて答える。
「…P.Bサン?」
「ン…誰だぃ?」
 初めてみるGRENの顔を訝しげに見るP.Bに、天下は慌てて彼を紹介した。
「おぉ、GRENさんかァ。…っつか、この3ヶ月どこで何してたんだぃ?」
「どこで何って…。俺、つい今しがた来たばっかりなんだけど」
 天下と同じことを聞かれ、GRENは首をかしげる。
「…やっぱりか」
「何が?」
 腕組みして唸るP.Bに、問いかけるGREN。
「いやね。どうもあっしたち、バラバラの時間帯に飛ばされたみたいなんだな、これが。一番最初に来たのがあっしで、
3ヶ月ほど前のことさ。その後、天くん、ヴァイスくん…と合流していったんだが、お前ェさんと弐式サンがなかなか現れ
なくてよ」
 どっかで敵にやられちまったんじゃねぇかって心配してたんだよ。とP.Bは言った。
「なるほど。…で、ところで竜さんは?」
「あぁ、今ヴァイスくんと一緒にこっちに来てるぜ」
 P.Bが背後をあごでしゃくった。小さく見えていた二つの人影…【ヴァイス】【恐竜戦車弐式】は、仲間たちの姿を
見ると急いで駆けつけた。
「…もしかして、GRENさんですか? ヴァイスです。はじめまして!」
 礼儀正しく頭を下げるヴァイスに、思わずGRENも最敬礼で応える。
「じゃ、こっちが竜ちゃ…って、どうしたの? 随分とくたびれてるみたいだけど」
 声をかけようとしたのがはばかられるほど、心身ともにボロボロの雰囲気の弐式。と、彼はつとめて明るく笑顔を見せ
た。
「なぁに。一人旅がちょいとキツかっただけさね」
「?」
「弐式サンはね、時期的にあっしといっしょの頃にこっちに来てたらしいんだが…」
 説明を始めたP.Bに、弐式が続ける。
「着いた場所が、なんと北海道だったんだよ。手持ちの資金もあんまりないしさぁ、本土に着いてからはずっと歩いてき
てたんだ」
「そこを、彼の情報を得た僕たちが迎えに行った、というわけです」
「…なるほど。大変だったんだねぇ」
 自分以上に波乱万丈な展開をねぎらうGREN。と、P.Bが彼の肩を突っついた。
「…ガァーツが動くぜ」

 ガァーツの二人は、謎の異形と対峙していた。天津ワールドのそれにあるまじきその奇怪なフォルムは、それが明ら
かに異質であり、あってはならないモノだということを如実に顕していた。 
「…ちぃっ、なんて頑丈なヤツなんだ。…ひな、本気で行くぞ!」
「はいですっ!」
 和也の声にひなが頷き、二人の光の使者は内に秘められた本来の力を解放させる。

「“デルタスター”発動! …バージョン・アップ・ファイトぉ!!!
「“命の鎖”よ…我が魂と光をつなぎ、新たなる力を示せ! ガウル・現臨!!!

 ひながV2へ、和也がガウルへと変貌する。二人は手の中に力を集め、敵に向かって一気に放出した。 

ガァーディアン・フェニックスッ!!!

ソウル・スマッシャァァァァァッ!!!

 二人の渾身の魂の力が異形を直撃する。空を振るわせるほどの爆音がこだまし、戦いを傍観していたGRENたち
は、地面が僅かに軋んだのを感じた。
「こいつぁ…スゲェ」
 弐式が思わず感嘆の声を上げた。


「…やった…か!?」
 爆煙が緩やかに収まる。その向こうの事実を目の当たりにした瞬間、和也は色を失った。
「無、傷…だと!」
 異形が哂った…ように見えた。次の瞬間、体のパーツをはがし、一斉に放つ。凶器と化した破片は和也たちを滅多打
ちにして、その体を虚空に打ち上げた。

「「うわぁぁぁぁぁっ」」
 受身すら取れず、二人は地面に叩きつけられる。想像を絶するほどのそのダメージは、二段変身した彼らにも耐え切
れなかったのか、二人の変身は解け、そのまま気を失った。
「和也! ひな!」
「待て、GREN」
 飛び出そうとするGRENの肩をP.Bが押さえ込んだ。
「何すんだよっ!?」
「今飛び出してどうにかできる状況か?」
 自分が来るまでにどんな事があったのか、すべてを知っているであろうP.Bの言葉は重かった。
 しかし、GRENとて譲れないものがあった。
「どうにもできないかもしれない。…だけど、少しでも“どうにかできる”なら、俺はそれに賭けたいっ!」
 肩を掴むP.Bの手を振りきり、GRENは異形の前に立ちはだかる。
「あぁ、もうっ! 待てってば!」
 追いかけるP.Bたち。5人の青年が一堂に会し、10の瞳が異形を睨みつける。

『…ダ…レダ……キサ…マ…ラ……』
 異形が壊れたテープレコーダーのような無機質な声を発した。

「正義の…味方ってヤツさっ!!!」
 GRENが大見得を切る。
『…………』
 異形は応えず、体の中央から砲身を捻り出し、光を収束させていく。
「ちょ、ちょっとGRENさん…カッコつけといてなんですが、かなりヤバくないですか?」
 ヴァイスが焦りながら問いかける。
「ヤバいの上等! つーかコレくらい恐れてて、ヒーローが務まるかってンだ!」
 そう言うGRENの足も僅かに震えている。それを押さえ込むかのように地面を強く踏み込む。

『…ナラ…バ……死……ネ』
 その言葉がトリガーとなったかのように、異形のブラスターが発射された! 


「かかってきやがれ! 根性勝負じゃあぁぁぁぁぁ!!!」








   A-PART:了→B-PARTに続く。 





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